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……御免なさい」 長い黙考の末、絞り出した声がそれだった。 早朝の伽藍。そこに立つのは独創的な僧衣に身を包んだ聖白蓮ともう一人、○○という男。 「気持ちは、嬉しいのです……本当に。しかし私は邪法で永らえる浅ましい身なれど、やはり仏に仕える……」 「分かった。大丈夫だから」 瞳を伏せたまま、心臓に突き刺さった刺を抜くような苦悶を浮かべる彼女の言を遮る。 あまりの悲痛さに、見ていられなかった。 想いは通じなかったものの、好きになった女の、そんな姿を見るのは○○とってあまりにも辛く…… あまつさえそれが自分のせいだとあらば、是非もなかった。 彼女にフラれた身である自分の失意や、切なさが、今は全く気にならない。 きっと、あとでみっともなく男泣きするのだろう。 しかし……、今は、彼女を守りたかった。 その為に自分の想いが邪魔となるなら、こんなもの!と、捨てるのに迷いはない。 何故なら恐らくは、それが自分にできる最後の愛情表現なのだから…… 「い、いやー、バカなことをいった。気にしないで、忘れてほしい。ほら、忘れた! な、俺は忘れた! いやー、忘れたな。うん」 ○○は不器用だった。 口をついてでた言葉のこの不格好さたるや……別の意味で泣きたくなる。 そして、この期に及んで聖の前で良い格好をしたいと望んでいた自分の浅ましさに気付いて、○○は吐きそうな程の自己嫌悪に襲われていた。 「○○さん……」 薄く瞳をひらいて、上目使いで恐る恐る○○を見る白蓮の姿は殊更に弱々しく、更に○○を打ちのめす。 こんな筈では…… こんな顔をさせるためにここにいた訳じゃないのに。 ○○は背を向けて、その場を離れた。 今このとき、自分は毒でしかない。 そう思って。 これが彼女のためだと言い聞かせて。 しかし、本当は自分がいたたまれないだけだろう? という己の中の声を聞きながら伽藍に聖白蓮を残しその場をあとにした。 滲む視界の中、ただひとつ。今日限りこの想いを捨てることを心に決め、足早にさった。 それが、一月まえのことである。 そして今、一月経って○○がどうなったかというと…… 「水蜜、ちょっと重いんだが……」 まだ寺に居るのです。 幻想郷の空を遊覧する船、その操舵室。 ○○の膝の上で上機嫌におくつろぎだった船長は口を尖らせた。 「女の子に重いとか……ちょっとデリカシーないよな、○○は」 キュロットスカートから幽霊だというのに健康的な両足を投げ出し、バタバタと宙を蹴る村紗。 背中を○○の腹に預け、頭をグリグリと押し付ける様はいたいけで、まるで仲の良い父と子のように微笑ましい。 村紗も本気で○○を責めるつもりなどない。 ただ、この軽妙なやりとりを楽しみ、○○の少し困ったような苦笑いをみたいだけだった。 だから、つい口が滑ってしまった。 「そんなだから聖にフラレるん……」 「ご、ごめんなさい!」 預けていた背中が、○○の体の緊張を余さず伝えてきて、彼女は弾けるように向き反転させた。 「大丈夫?、ご、ごめんね、あの、私、そんな積りじゃなくって! あの、あの、ごめんなさい、わた、わたしは違うから!」 大きな瞳、整っているが少し低い鼻、ぽんぽんと小気味良い声をぶつけてくる口、それらの全てをぐしゃぐしゃにして村紗は○○の襟にすがり付いた。 「御免なさい」が少しトラウマ気味の○○だが、この純粋に好意をぶつけてくる子供には無条件に許しを与えたくなる。 女としてではなく、父子のそれでもなく、微妙ながらも最も気安い間柄にいてくれる村紗を○○は愛している。 だから、彼女が心配することなんて、ただの杞憂だと、心配など要らないんだと、○○はとても安らいだ気持ちで伝えた。 ぽん、と。さらさらの黒髪をもつ形の良い頭に手をのせる。 「…………」 気にしすぎだ、とか。 心配するな、とか、そういった言葉を言おうとした○○だが、やめた。 最近になって気が付いたのだった。 言葉を発しない方がうまく伝わることもある、と。 ぽす、ぽす、と赤子の背をさするように村紗を撫でる。 掌から、この不細工な己のにやけ面から、誤解なく気持ちが伝わるようにと。 「怒ってない?」 「……」 「で、出て……ぃ、行ったり、しない?」 「……」 「う、うう、なんかいってよぉ……ほんとに大丈夫? 信じて良い?」 「……いいぞ」 「!」 なんとか言質を取ろうと、しかし不興を買わないよう恐る恐る顔色を伺っていた村紗は、その一言で弾けた。 まるで封印がとけられたように勢いこんで両腕を広げ、○○の首にしがみついた。 ありがとぉ……」 鼻声を直接ぶつけてくる村紗に、それは俺の台詞だ、と言いたかった。 あの朝、白蓮にフラれたのは、やはりショックだった。 こんなこと、誰にでも起こること、イケメン様でもあるまいに、釣り合うとでも思ったのか? オーケーオーケー順当な結果だ、な、だからどーってことないそうだろ? などなど、慰めか自己嫌悪か分からないような言葉が飛び回るなか、現実の自分は嗚咽だけは漏らすまいと奥歯を噛み締めていた。 己に何の価値もないように、自分を全否定されたよう感じていた。 酔ってるのか? 大袈裟だ、と俺でない自分が言っている。 そうだ、それが正しい。それで合ってる。しかし……収まらない。 分かりやすく打ちのめされていた。 思うに、幻想郷の女は一途で惚れっぽい、という風聞を宛にしていたせいもあるのだろう。 森の魔女、冥界の少女、そして博麗の巫女など、名だたる麗しい少女が外来人と番(つがい)、幸せを謳歌している。 自分も、もしかしたら……と期待を寄せていたのだ、きっと。いいや、確かに思っていたのだ。今度は俺の番だ、と。 その結果が、その増長の報いがこれなのだ…… 早朝とはいえ、寺の朝は早い。 しかし誰も○○のもとへと訪れることはなかった。 怒濤の波がひき、真っ直ぐに立ち上がれるようなるまで。 聖白蓮をすっぱりと諦める気持ちが、覚悟のような大袈裟なものでなく、自然に身に染み込んで、例えば手でそこを拭っても濡れないほどに染み込むまで。 ○○は感謝した。 寺の皆が気を使ってくれたのは明白だった。 そして、その日の夕方、掃き掃除をしている○○に村紗が言ったのが、奇しくも「出ていったりしないよね…?」だった。 目の奥が灼熱のように煮えた。 必要にされている。居なくなるのを否んでくれる。 それが雷光のように雲を裂き、本当の意味で○○を立ち上がらせてくれたのだった。 「ごめんね?」 現実の声が○○を回想から引き揚げる。 ちゃり、と鎖の揺れる音がして、村紗は腕から○○を解放した。 「水蜜?……これは?」 小さな錨をあしらったネックレス。 それは飾り気の少ないながらもコケティッシュで愛らしく、錨という武骨なモチーフながらも逆にいたいけな彼女によく似合う逸品。 ゆらり、と揺れると小気味良い音をたててピンと張り、ここが定位置とばかりに○○の心臓のあたりにとどまった。 「……あげる」 短く、しかし○○の目をみていった。 「良いのか?」 頷く。 「○○がどっかいかないように、その錨で留め置くの」 「……そうか」 「うん、錨ってそういうものだから」 そういうと、村紗は再び定位置へと戻り、○○の腹に背中を預けた。 足を伸ばし、上機嫌で寛ぎはじめた。 ありがとう、と○○は一言だけ言って、膝の上に掛かる重さを我慢する修行を再開した。 ソプラノの鼻歌と共に船は飛んでいる。 青い空と白い雲、遠く見える大地。 ○○は、空を飛べない。
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幻想郷の魔法の森にある香霖堂。 そこに〇〇と言う外来人の青年が住み込みで働いてる。 半年前に秘湯を探しに山に入っていたら幻想郷に迷い込んだらしく、気がつけば魔法の森を迷っていて途中、獣に襲われそうになり必死で逃げている最中に偶然、香霖堂を見つけ匿ってもらい店主である森近霖之助から幻想郷について説明をして貰った〇〇。 さっきまで怯えていたのが嘘のように、今度は好奇心に満ちた目をしていたのを見た霖之助は一つ提案をした。 霖之助「ウチは外来の品も扱っているけど、イマイチ使い方がわからない物もあるから使用方法と店を手伝ってくれるなら食と住は約束するよ?」 と、言うと〇〇は二つ返事し、しばらく留まることにした。 性格は明るくて気さくで飄飄としていて里人達はもちろん、商品の配達先や来店して来る幻想郷の重鎮の女性達にも受け入れられていた。 突然だが、女性はよく会話に建前を使う。 それは幻想郷の人妖及び神の女性にも当て嵌まるみたいだ。 最近、霖之助が里への買い出しに行く時に店番を任されるようになった〇〇。 それを見計らったように幻想郷の重鎮達が客でよく来店した。 紫「最近、ウチにゴキブリが出たのよ。」 そう言うのは、幻想郷の管理人【?】である八雲紫。 〇〇「あらら…ちょっと待って下さい。確かいいのがあったはず…あったあった。はい、これをどうぞ。使用方法ちゃんと読んで下さいね?」 そう言って〇〇が出したのはバルサン。 慧音「料理を少し作り過ぎて困っているんだよ。」 〇〇「そんな時はこれをどうぞ。これに入れてチルノに頼んで冷凍するといいですよ?」 そう言って出したのはジップロック。 幽々子「この前買った蓄音機が調子悪いみたいで雑音が入るのよ。」 〇〇「あぁ、それは多分針がダメになっているんですよ。針は消耗品ですからね、はいこれをどうぞ。」 そう言って出したのは蓄音機用の針。 諏訪子「あ~う~、〇〇。」 神奈子「最近、里で盗っ人が多発しているみたいなんだよ。」 〇〇「あぁ~、もし神社の大切な物が盗まれたら信仰に関わりますね。じゃあ、取りつけも簡単なこれをどうぞ。」 そう言って出したのは簡易版の警報機。 それぞれに要望に見合う商品を出し、上手く営業する〇〇。 そこへー、 霖之助「ただいま。…これは皆さん、いらっしゃい。」 霖之助が帰って来た。一瞬だけ妙な間があったが全員に挨拶をしそそくさと奥に引っ込んだ。 それは何故か? 理由は余りにも強いプレッシャーを感じたからだ。 全員が〇〇に対して「ウチに来て。」や「言い訳作ってあげているんだからさっさと来ようよ。」という雰囲気があるのだが〇〇本人は気付いていない。 そして、霖之助は先日見てしまった。 今日みたいに〇〇にアプローチも虚しく帰る時、全員が虚ろな目「早く〇〇を連れて行かないと…。」と呟きながら帰って行くのを。 〇〇が配達や買い出しで行った時に話した里の茶屋や商店などの若い女性が後日、上記の女性達にかなりのいちゃもんをつけられているのを。 それを見てから霖之助が買い出しに行くことにしたが、霖之助は思った。 霖之助(〇〇君、もうすぐで多分、お別れだ。) ーと。後日、〇〇は香霖堂から忽然と消えた。
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出ると有名なとある神社に肝試しに来た時、僕は神隠しに遭い、幻想郷にやって来た。 博麗神社の低級妖魔除けのお守りのお陰で、僕はそれなりに充実した幻想郷ライフを送る事が出来、 つい最近、この郷に永住しようと決心した。 幻想郷に来て一年、ある日僕は『未来を視る程度の能力』に目覚めた。 その事を仕事仲間に話したら、羨ましがられたが、全然嬉しくなかった。 なにせこの能力は、結果しか見えないからだ。 例えてしまえば、映画館に入ってオープニングを視ていたら、 いつの間にかエンドロールが流れていた、という様な感じである。 肝心の過程が分からないので、頭に浮かんだ未来がなんでそうなったのか全く理解できない。 それにこの能力のせいで、最近周りに怯えながら生活する羽目になった。それは、 「やぁ、○○、肉じゃがを作りすぎてしまったのでお裾分けに来たのだが。 (ウフフッ、幻想郷内全ての人妖の歴史を消したから、ここにいるのは私と○○……いや、旦那様だけ……)」 「○○、今日外の世界から新しい機械が入ってきたから、一緒にばらそ。 (ごめんね、○○。○○が寝ている間に、体に爆弾を仕掛けちゃったの。 私から少しでも離れたら爆発しちゃうから、もう離れる事出来ないよね)」 「おぅ○○、この大吟醸借りてくぜ! (○○がいけないんだ……。私の事を女としてみるから……。もう、お前がいなかったら、私は……)」 親しく付き合っている幻想郷内の実力者の未来が勝手に視えてしまうのだ。 一体彼女達になんて言ったんだ、未来の僕。 このままではまずい。本当だったらここに永住するつもりだったけど、 こうなったからにはなにがなんでも幻想郷から脱出しなければならない。 でも、出るにしても霊夢も紫様も災いを与える存在でしかない。 下手に動いても動かなくても酷い未来になってしまうので、どうすればいいのか分からない。 考えれば考えるほど宜しくない未来が浮かんでは消えた。 そうこうしている内に疲れて眠ってしまっていたらしい。 しかし、その夢の中で希望を見つけた。 森の中をさまよっていると、いつの間にか元の世界に戻っている、という夢を見たのだ。 この幻想郷内で森といえば魔法の森しかない。 起きてすぐに身支度を済ませて、僕は魔法の森に向かった。 ――――――○○移動中―――――――― 「○○さん、最近身に付けた未来を視る程度の能力について聞きたい事があるのですが。 (○○さん、これであなたも私達と同じ天狗になりました。 もう他の天狗の目を憚る事なく愛し合う事が出来ますね。嬉しいですか、○○さん)」 「あの、今急いでいるので、取材は後で」 「○○さん、今晩山の神様達を招いた宴会があるのですが、一緒にどうですか? (大丈夫ですよ。私も半神なんて止めて完全な神様になりますから、これからは一生一緒ですよ)」 「あぁ、その時間は仕事の都合で……」 歩き始めてから数刻も経たない内に、僕の後ろには知り合いの少女達が列をなしていた。 様々な未来が頭の中を過ぎっていった。どれもこれも、いろんな意味で人生が終わりそうなものばかりだった。 ――――――○○早歩中―――――――― なんとか魔法の森までやってこれたけど、どうすれば元の世界に戻れるのかは相変らず分からなかった。 それどころか、最悪な事に十重二十重に囲まれ、身動きが取れなくなっていた。 「こんなたくさんの女の子に囲まれて、あぁ……妬ましい……。 (私に愛されて嬉しいの、○○?あんたの幸せそうな顔を見てると、こっちが妬ましくなるわ!)」 「こんな所まで来て疲れたでしょう。近くに私の家があるから、そこで少し休まない? (私の可愛い可愛いお人形さん、今日はなにをして遊びましょうか、うふふふふ……)」 「○○、閻魔である私の話を無視するとは、失礼にも程がありますよ。とりあえずそこに直りなさい。 (○○、あなたがこれまで他の女に色欲をばら撒いた罪、私で以って償いなさい。それがあなたに出来る善行です)」 というか、少女達に包囲されるなんて夢には無かった。まさか、未来が変わってしまったのだろうか。 絶望し、後退りした瞬間、僕はなにかに躓き、後ろ向きに転んでしまった。 目に火花が散り、気が付いた時には、僕を包囲していた少女達は一人もいなくなっていた。 それどころか、森にいたはずなのに、僕がいたのは神社の境内だった。その神社を、僕は知っていた。 博麗神社でも、守矢神社でもない。ここは間違いなく、僕が神隠しにあった神社だった。つまり、元の世界に戻れたのだ。 「いやったぁああああ、帰れたぁああああ!!!」 「なにが帰れたの、○○?」 振り向くと、懐かしい声がした。 「蓮子先輩とメリー先輩、どうしたんですかこんな所に?」 「それに答えるのは本来君の方からなんだけど、まぁいいわ。 メリーがこの神社に隙間があるっていうから来ただけよ。 っで、君は午前三時三十三分五十秒になんでこんな所にいるの?」 相変らず異様なくらい時間に正確な蓮子先輩に驚きながら、僕は幻想郷での出来事を掻い摘んで説明した。 なぜか女の子の名前を出すと、先輩二人の表情が一瞬翳った様な気がした。 途中でちょくちょくメリー先輩が声を出した。どうやら、メリー先輩も幻想郷に行けるらしい。 それにも驚いたが、本当に驚いたのは、幻想郷での一年が、元の世界では僅か四時間しか経っていないという事だった。 全てを話し終えると、二人はにやにやといやらしい笑みを浮かべていた。 「メリー、○○の幻想郷脱出記念に、これから居酒屋でパァーとやらない?」 「いいわね、さぁ、そういう訳で一緒に行きましょう、○○。大丈夫、お金ならたくさんあるから」 有無を言わさず、僕は先輩二人に引っ張られて、夜の街に消えた。 翌日、○○と蓮子、それにメリーが大学を自主退学した。
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幻想郷に迷い込んで早くてもう半年、こっちへ来て世界観が180度変わったと言える。 何せ神様や妖怪に妖精、幽霊や果ては宇宙人も平然と居るし全員が綺麗な女性だから驚きだ。 それに俺みたいな奴が知り合いになれたから尚更、驚きだ。 ただ今、早朝であり寝ぼけ眼を覚ますために顔を洗いながら新聞を広げて見ている。 因みに新聞は来て早々、取材を受けた烏天狗の女の子に購買を奨められたが誇張に書かれていることが多多あると聞いていたからやんわりと断って、別の天狗を取っている。 世界観が変わったと言えば最近、この新聞の片隅にある占いを見るようになった。 向こう【外界】に居る頃は「くだらない。」と思っていたが空想の存在が居たり魔法や呪術みたいのが有り触れている幻想郷では嫌が応でも信用する。 〇〇「さて…今日の運勢は?なになに、『女難の相があり。迂闊な行動を抑えるべし。ラッキーカラーは紅、白、黒、紫、藍、橙』って、何かやけにラッキーカラー多いな…。」 そう思っていると…。 「「「「「〇〇【さん】開けて【下さい。】女難から守りに来たわよ【来たぜ。】」」」」」 あれれ?外から複数の知り合いの声がする? 霊夢「あんた達はお呼びじゃないわよ!!〇〇さんは今日【から】はウチの神社で過ごすのよ!!」 魔理沙「おいおい、寝言は寝て言えよ霊夢。何に対しても無関心のお前が〇〇に対して柄にも無いことするなよ!!」 映姫「〇〇は咎人故に女難が降り懸かるのです!私の部屋で善悪を白黒つける教育をします!!」 紫「あなた達みたいなお子ちゃまが纏わり付くのが女難よ。〇〇には私みたいな淑女が隣に居るべきなのよ。」 橙「紫さまー、それは私にも言えることなんですかー?」 藍「大丈夫だぞ橙?私と一緒に居れば〇〇を守れるぞ?」 そんな会話が聞こえた次の瞬間、物凄い轟音が起きた。恐らくは弾幕勝負が始まったのだろう。 〇〇「ラッキーカラー…迂闊な行動に女難の相…。どうしよう俺……。」
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〇〇「霖之助さん、もう雑誌が無いですよ?」 霖之助「おや、そうかい?君が店番すると雑誌がすぐになくなるな。また無縁塚でまた拾って来るか。」 森近霖之助が経営する香霖堂に働く従業員の青年〇〇。 外来人の彼は魔法の森で迷っている所を霖之助に保護され、幻想郷の説明を受けて驚き困っていたが霖之助から外界の道具の使い方と店番を手伝う条件でしばらくの間、居候させてもらっていた。 〇〇「そうですね、皆さん他の商品には脇目も振らず雑誌のコーナーへ一直線ですよ。」 客として訪れるのは博麗の巫女に白黒の魔法使い、紅魔館のメイド長に守矢神社の巫女、幻想郷の管理人である八雲の主従や、白玉楼の主従、永遠亭の主従に果ては人里の守護者と言った幻想郷の重鎮である人間や妖怪が〇〇が店番している時に雑誌を求めて訪れていた。 〇〇「しかし、あの雑誌を買うのはやっぱり女性の皆さんは憧れるものなんですかね?」 幻想郷の人妖の女性が求めていた雑誌、それはある日無縁塚から〇〇が拾って来た「ゼク〇ィ」だった。 試しに店頭に並べてみたら大盛況だったから拾って来る度に並べているが…。 〇〇は気がついてなかった。人妖問わず気さくに接する〇〇を会計の時に彼女達が獣が獲物を見つけたような目で見ていることを。 そして、それから数日後に無縁塚で「た〇ごクラブ」と「ひ〇こクラブ」を見つけた〇〇。 当然、店頭に並べるとさらに彼女達が頻繁に香霖堂に訪れることを。 霖之助(やれやれ…どうなっても知らないよ〇〇君?)
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タグ一覧 TS 易者 鈴奈庵 ○○がふと気が付くと、いつの間にか暗い部屋に迷い込んでいた。今までいた人里の道にいた筈なのに、ここには人の話し声が、いや気配すら感じられなかった。 さっきまでは燦々と輝いていた太陽は無くなり、部屋の中に明りは見当たらず薄ボンヤリとしか辺りは見えない。○○は首を動かして周りを見ると、部屋の中に一人の人物がいることに気が付いた。 「やあ。」 かけられた声からするとその人は女性だろうか。○○はその女性を見ようとするが顔が見えない。まるで焦点が合わないような、視界には入っているのに、映像としては自分の目から脳に送られているのに、恰も脳がそれを認識することを拒むかのように、その人の顔は見えなかった。 「折角だから、座りなよ。」 そう言われた後で、○○は自分が椅子に座っていることに気が付いた。テーブルを挟んで自分の目の前に女性がいる。息づかいすら聞こえそうな距離なのに、目の悪い人が眼鏡を外してしまったかのように相変わらずその人はボンヤリと視界に写っていた。 「ふうむ、何から話せばいいのかな…。」 思いあぐねる女性。何かを話したそうで、然りとてその整理が付かずに、暫く考え込む女性。 「まあこの際だ。全部話していこうか。」 「一体何なんですか?」 ○○が女性に質問する。買い物をしていたのに、気が付いたらいきなり変な場所にいたことで、○○は面食らっていた。 「ううむ。一言で説明するのは難しいね…。まあ、君を招待させてもらったんだよ。」 「どういうことですか?」 「ところで君、この世界がどういうものか知っているかい?」 「この世界」で「こういう質問」をしてくる手合いは限られる。普通の人間ならば気にもせずに生きているこの幻想郷に疑問を持つ存在。 それは外に世界があることを意識しているモノであり-即ち人間の垣根を越えた人外である。こちらが身構えたことを感じたのか、女性が手を振って否定した。 「ああ、別に君が「どう答えた」からといって、取って喰おうって訳じゃないさ。」 -これでも一応は、ヒューマニストを気取っているからね-と付け足す女性。掻上げた黒髪がサラサラと流れる。○○は咄嗟に脳内で幻想郷縁起に記されていた妖怪を探したが、見当がつかなかった。 黙り込んだ○○に構わずに女性は話しを続ける。 「君のような外来人からすれば、この世界には妖怪が溢れていると思うだろうね。」 「ああ、そうだが…。」 「ならば、妖怪に管理されている、とも思うんじゃないかな?」 「……。」 余りにも危うい質問に、○○は答えを言えなかった。冗談で言うには余りにも真剣で、そして真剣な答えを返すには、余りにも恐ろしく、その話題は「理解ができる」外来人にとっては禁忌とも言えた。 そしてなおも悪いことに、時として沈黙はそれ自体が雄弁な答えとなってしまう。すなわち、沈黙は雄弁に勝る。 「悪い、悪い。君のようによく分かっている外来人にとって、これはタブーだったね。…それとも、分からされてしまうことがあったのかな?」 ドキリと○○の心臓が鳴る。幻想郷にいればそういった不愉快な事に出会うのは、偶にあることであった。 「そうか、君は幻想郷の賢者に遠慮してるんだな。ここではそれは大丈夫だよ。」 「どうしてそう言えるんだ?」 ○○が口を開く。 「ふふふ…。」 ○○の言葉を噛み締める女性。子供が飴玉を大切に口の中で転がすかのように、言葉を反響させているようであった。 「この世界には境界の管理人がいる。幻想郷と外の世界を隔てる境界を管理するのは八雲であり、そして幻想郷の中を管理するのは博麗。」 「八雲紫が誰がこの世界に入ってきて良いかを見極め、博麗霊夢が幻想郷の中の秩序を維持している。例えば異変を解決したり、秩序を乱した妖怪を退治する。」 ヤレヤレ、と言わんばかりに両手を広げる女性。 「まあ、そのせいで私は博麗に退治されてしまったんだけれどね…。」 ボソリと付け加えられた言葉は、○○の耳に入ることは無かった。 「この世界では妖怪が人間を支配している。それ故に人間が妖怪になることは厳しく禁じられているんだよ。 しかし、幻想郷に存在するのはそれ以外に色々とある。例えば、君は貸本屋の少女が最近、人外の仲間入りしたことを知っているかな?」 「鈴奈庵の娘さんことか?」 「ああ、そうだ。あそこの少女が博霊神社で、妖怪と一緒に宴会をしているのを見た人がいる。つまり彼女は人里の人間でありながらも、妖怪の側に立っているんだよ。 それは本来は重罪、殺されてもおかしくは無い筈のことなんだよ。だが、少女は死ななかった。何故だろうねぇ…?」 「分からないな。」 即答した○○の答えを聞いて女性は皮肉げにニヤリと笑った。 「ああ、その態度、その答え、君は本当に理想的だよ。妖怪との関わりを避けようとするその態度、自分が危ない領域まで踏み込まないようにするための、硬直されたその思考。 君は本当は気づいているというのに、気づくことを恐れているんだよ。」 「どうして妖怪の世界に踏み込むことを恐れているんだい?君が以前生きていた外の世界では、妖怪なんて居なかっただろうに。幻想郷でそんな空想の存在に出会ってしまったからには、最早君は人外の領域に踏み込んでいまっているんだよ。 決して君が望まざるとも…ね。」 「ああ、少々いじめ過ぎてしまったようだ。ついつい突っ切ってしまうのは昔からの悪い癖だよ。実は本当は、私は君に好意を持っているんだよ。 ふふふ…。話しを続けようか。答えは八雲紫がその少女を認めたからさ。本居小鈴という存在が、幻想郷に存在して良いと、そう管理者の彼女が認めたからこそ、今も彼女は存在することが出来ている。 結局の所は八雲紫が許すか、許さないか、それだけなんだよ。」 「ならば八雲紫は何を求めているのか。何故本居小鈴は人外となり、私は人外になれなかったのか。それは彼女がある種の理想を追い求めているからさ。 単純な下世話な脳味噌が騒ぎ立てる同性愛なんてものじゃない。それは彼女の理想からするとズレてしまっている。彼女は自身でも一つの役割を果たしているが、それは理想を実現させる手段に過ぎないのさ。」 「○○、流石にそこまでは君も理解できていない様だね…。まあそれは仕方が無い話しだろうね。なにせ明治で切り捨てられてしまった歴史なのだから。 二十一世紀に生きている君では最早…。まあ大丈夫さ、心配しなくても良い。今回は上手く行くからね。」 「今回はちょっと趣向を変えてみたんだよ。男の妖怪だったから殺されたなんてことは一つの重大な要因ではあるが、それは幻想郷の理想からすれば本質ではないのさ。 全て少女しか認められていないのならば、半妖の小道具屋の店主なんかは排除されている筈だからね。神様なんて存在からすれば、性別なんて物はある種些末な事。 豊聡耳の復活すらも彼女の手の平の上ならば、そこに流れているのは一つの底流であるのだから。陰陽玉の様に陰と陽が調和する、男女が愛で繋がっている世界を彼女は目指しているのかも知れないね。」 「さあ、妖怪らしく君を喰べようか○○。なあに死にはしないさ。これでも私は一応は、ヒューマニストだからね。」 感想 名前 コメント
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予想以上に長文になってしまったすまん 病んだ親子愛を目指してみた 獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす。ならば妖怪は・・・・ 僕が意識を取り戻すとそこに理想郷はなかった 僕が考え出した物理障壁は破壊され 僕が自らの血を憑代に書いた呪符は燃え上がり 皆で建てた家々は破壊され、その暗がりでは皆が・・・・悦びの声を上げていた 少し女っぽい所のあった●● 頭は弱かったが弓矢でクマを倒せるほどの腕前だった×× 筋骨隆々の偉丈夫だったけど甘いものが好きだった□□ 皆アイツらの腕の中で快楽を貪っている 僕の父親のように・・・・ 僕が生まれたとき、父親はいなかった 居たのは金髪の「あの女」 僕はただ漠然とアイツを母親と思っていた でもアイツにとってはどうでもよかった 所詮、僕はアイツの「結婚生活」についてきたおまけだったのだから 邸の地下 そこには昔から複雑な呪法が書かれた一室がある 僕がソコへ行ったのは子供っぽい反抗心からだ 僕がその部屋に入ったら石のようなあの女が激昂するだろう 幼い僕はただそれだけしか考えていなかった 古文書で知った解呪法と結界解除法を使って呪法を引きはがす 無論、引きはがした呪法を別の部屋に張り付けて警報を止める 「何だよ・・・・これ・・・・」 目に入ったのは僕とあまり変わらない年恰好の少年 そのスレンダーな肢体は様々な装飾品に彩られていた まるで王子様のようだったが、首や四肢に拘束具がつけられていた 異常なのはそれだけではない その少年の髪の色と瞳の色以外は僕とほとんど「同じ」だった 僕が生まれて以来、アイツは父親の話をするのを許さなかった 目の前の「彼」は・・・・僕の「父親」だった 恐怖に慄いた僕は家を飛び出した 夜の帳が下りて、森が闇に包まれる 怖気を感じるような妖力を感じる その瞬間、足元の地面が消失した あの女の能力だ 「スキマ」の中にあの女がいた 「とうとうラインを超えたわね・・・・」 相変わらず石のような表情を崩さない 「アイツ・・・地下のアイツは僕の父親なのか?」 「ええ」 「なぜ教えなかった?」 「親が子に全てを与えるとでも?」 「あなたはいつもそうだ!僕は何者なんだ!」 「ありていに言えば私の息子。そして・・・・卑しき半妖」 「畜生・・・・・」 「もうあなたの居場所はない。どこぞへと去りなさい」 「帰りませんよ!あなたのような悲しい親の元になんて!」 「好きにしなさい」 目の前には闇 いくつもの獣の声が響いていた 半妖であるとはいえ、僕は人里で生活することはできない 人里の守護者こと、上白沢慧音さんは便宜を図ってくれようとした だが、半妖が人里に馴染むのは難しい 僕は慧音さんに礼を言い、妖怪の山の裾野に居を構えた 数年が経った 近くに住む豊穣の神姉妹と知り合い、どうにか一人暮らしができるようになったとき、予期せぬ訪問者が訪れた 「助けてくれ!!!」 彼は人里の外来人で名前を●●といった 彼は外界への帰還を行うために日々新聞の配達をしながら外来人長屋で生活していた そんな彼を天狗が見初めた 彼は外界への慕情深く、彼女の求愛を断った 結果、仕事を失い、天狗は人里の長老に竜巻を起こすと脅して●●を供物とするよう圧力をかけてきた 運良く、慧音さんが彼の歴史を一時的に食べ逃がした 裾野に住む隠者に助けを求めるように、と 「●●さ~んでてきてくださいよ。あんなによくしてあげたじゃないですか」 口調は柔らかいがその裏には凶暴さが滲みだしている 僕は憎い「アノ女」から受け継いだ能力を使った 空中を目玉飛び交い、辺りの空気が変わる 「これで大丈夫だ。アイツらは此処を知ることができない。領域を弄ったから」 「領域」を操る程度の能力 忌々しいが、この能力があるおかげで一人で生き延びてこれたといえる 今、ここ全体があの「化け物」の理解できる領域外にある 三次元と四次元の関係と同じで、こちらは相手を見ることができるが相手はこちらを見ることすらできず、干渉することもできない 「君はこれからどうしたい?」 「人里には戻れないからな・・・・・正直」 「ならここに住めばいいさ。多少、手伝いをしてもらわなければいけないけど・・・」 「よろしくお願いします!えっと・・・」 「僕は○○。苗字は・・・・ない」 この庄に最初の住人がやってきて、もう三年 様々な人間が訪れた 竹林の診療所で下男として雇われていた×× ついうっかり花札で鬼の女を負かしてしまったお蔭で強制婿入りの危機に陥った□□ 皆、止むに止まれぬ事情をもって此処にやってくる 僕は皆を守るために様々な仕掛けを準備した 僕がずらした領域を並みの妖怪が感知できるとは思わないが、最低限の備えは必要だ 何よりも皆、「家族」を守りたかった それだけだった ユートピアの日々はある日突然終わりを告げた 綻びはささやかなところから始まった 「蟲の数が多い?」 ここ幻想郷では毒のある蟲も多く生息している そのため、領域ではじかれるようにしている 思えばこの時に場所を移すなどすればよかった そうすればこんなことにはならなかった 赤い満月が見下ろす夜だった 村を極彩色の弾幕が襲った 皆は飛び起きてきた そして彼らの目の前には 「ウソだろ・・・・・・・?」 あの化け物達が群れをなして襲ってきた 僕はあらん限りの妖力を使い、反撃する だが多勢に無勢だった なぜか「領域」は無効化されてしまっていた 皆は手に鉈や弓、先込め式のライフルを持ち反撃するが、一人一人と連れて行かれる 中には暗がりに連れ込み、彼らを凌辱しはじめる奴もいた 衣服を引き裂く音が響き すすり泣く男たちの声が途切れることはなかった そして興奮した「化け物」の笑声が木霊する 「やめろ・・・・・!やめてくれぇぇぇぇぇぇ!」 妖力を振り絞って見込みのない反撃をしようとした時だ 背後からの衝撃が僕の意識を刈り取った 消え去る意識の中、背後に「あの女」が立っていた 「血は争えないわね。ここに理想郷を作ろうなんて・・・・・」 ○○の母親 八雲紫は幾分か成長した我が子を抱きしめた 何度こうしたかったか だが、幻想郷の管理者としてそれはできなかった 彼女は○○をあえて冷たく扱った それは、彼を新たな「管理者」として教育するためだった 「力なき理想は脆い。これでわかったでしょう?」 ○○は答えない 「貴方は幻想郷の申し子。母親を娶ったオイディプス王のように全てを破壊し幻想郷を我がものにしなさい。そのための試練は私が用意してあげるわ・・・」 狂った饗宴に終わりは見えなかった いつのまにか男達は悲鳴の代わりに、快楽を貪る嬌声を奏でていた 「・・・・あなたの力になる半妖はいくらでも用意してあげるから」 紫が○○の頬をなで、そして笑みを浮かべた
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幻想郷に春が来た。 人里に住まう○○は、春の息吹が席巻する間、自宅に篭もって息を潜める。 「○○さーん~春ですよぉ~春が、私が来ましたよぉ~」 ドンドンドンとドアを叩く音が聞こえる。 リリーホワイトはこの時期興奮してて、特に好意を寄せている○○に強烈な勢いで迫ってくる。 始めて過ごした幻想郷の春、つまり去年だが酷い目に遭った。 だから○○は賽銭と引き替えで巫女に作って貰った物忌みの護符を戸に張り、彼女が興奮している間家に引き籠もるのだった。 しかし、彼女もこの時期は本当にしつこい。 春を告げる妖精とは思えない程澱んだ眼光と歪んだ笑みを浮かべ、○○の家に這入り込もうとするのだ。 ドンドン。 「○○さーん、春ですよぉー」 「○○……春、来たよ……」 ドンドンドン。 「○○さーん、春ですよぉー」 「○○……春、来たよ……」 「○○さん、秋来ましたよー」 ドンドンドンドン。 「○○さーん、秋ですよぉー」 「○○……春、来たよ……」 「○○さん、秋来ましたよー」 「○○、紅葉の季節が来たわよ」 ドンドンドンドンドン。 「○○さーん、秋ですよぉー」 「○○……春、来たよ……」 「○○さん、秋来ましたよー」 「○○、紅葉の季節が来たわよ」 「○○、冬の季節到来よ、開けて頂戴」 ドンドンドンドンドンドン。 「○○さーん、秋ですよぉー」 「○○……春、来たよ……」 「○○さん、秋来ましたよー」 「○○、紅葉の季節が来たわよ」 「○○、冬の季節到来よ、開けて頂戴」 「○○ー、虫の知らせサービスに来たよー」 もう、突っ込む気力も無いが、最後のは違うだろと○○は思った。 家の戸が病んだ女の子達によって破られるまで後数秒の事である。
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「まさか貴女が……」 という言葉を○○は寸でのところで飲み込んだ。 博麗神社へと続く参道の前、○○の前に立ったのは赤藍の装束に均整のとれた肢体を包み、艶やかな銀髪を背に滑らせる女性………八意永琳であった。 幻想郷の女性達の深く重い愛情は○○の知るところでもあったが、しかしあの理知的で玲瓏たる彼女がこうして立ちはだかることには、やはり困惑は隠せなかった。 「………」 永琳はただ、黙して○○の前に立つばかりである。 しかしその様子が却って雄弁に○○へと語りかけていた。 彼女、永琳は○○の知るなかで妖怪、人間、神を合わせても、おそらくは最強の存在だ。 その力をもってすれば人間一人、つまり○○をこの土地に縫い付けるなど腰をあげる迄もないだろう。 永遠亭の奥、診察室の椅子に座ったままで事を完璧に済ませることも可能な筈だ。 しかし今、こうして直に○○の前を塞いでいる。 (そんなに俺の事を………貴女程の人が何故、そこまで?) 「貴方のそんなところか、気に入って。かしらね」 と、初めて永琳が声にだした。 それは自嘲げで、「仕方がないのよ」とでも言うように力なく眉を下げた。 「俺はそこまでの男じゃ……」 「等価交換ではどうかしら」 初めから予想していたのか、○○が言い切るのを遮って、永琳は一歩、前に出た。 「交換……?」 「そう。貴方がここに居てくれるなら、私の全てをあげる」 ここに、といって、永琳はその中華風の服の釦を上から二つ、中指と親指で弾くように解くと、みずからのその豊満な胸に手を当てた。 普段の永琳なら「そう、交換」と合いの手挟むところだが、しかし彼女は急いで言い切った。 きっと「ここ」というのは色々な意味を持つのだろう。 幻想郷という土地、永琳という女の心、そしてその胸の上に……と。 俺にそこまでの価値がない、とはもはや言えない。 彼女自身が等価値と、示したモノに同じ言葉を向けることになる。 永琳がそう言い切った以上、舌戦でそれを覆すことは不可能である。 「わかったよ」 そう言う他なかった。 「………」 「………俺のものになってくれませんか?」 ほんとに?と、上目遣いで問うてくる永琳に、○○はいよいよハッキリと印を捺すほか無かった。 想像を絶する程の智と力を持ちながら、こうした仕草を嫌みなくしてのける………恐ろしい女であった。 「嘘だったらひどいわよ?」 ノータイムで○○の腕の中に収まったまま、吐息を○○の胸に染み込ませるように愛撫めいて永琳は釘をさす。 ○○はなにも言えず、ただ目の前にある形のいい頭を掌で撫でさすった。 もしかしたら……。 もしかしたら、今少女のように胸の中にいる彼女の姿こそが本来の彼女かもしれない。 それは無いなと分かっていながら、「俺の永琳はこうなのだ」とも自惚れたい欲求が湧く。 そしてきっとこれも永琳には筒抜けなのだろう。ザルのように。 「きっと、楽しいわよ、私は」 これもまた、色々な意味にとれる言葉を首筋にはきかけると、永琳は瞳を閉じてついっと唇を差し出した。 ふるん、と柔らかな舌触りを確かめてから吸い付かれたソレは少女の弱々しさとは正反対に、積極的に触れ合いを求めてきた。 「ん、ふ、ふぅ……んんんっ、んーーはぁ……」 生々しい匂いの鼻息が、遠慮なく○○の鼻腔を犯す。 「んー、ぷばっ………ふ、ふふふふふ! 素敵!………ああ、そうだわ、忘れてた」 と、○○の、胸におでこを擦り付けていた永琳が、躁鬱のようにうって変わって冷たい声で離れた。 その様子に○○は不安を掻き立てられたが、しかしそれも一瞬。 「良かった………死なずにすんだわ」 言うが早いか、永琳は胸元から出した薬瓶を踏み砕いた。 薄いガラスは易々と砕け、内容物は全て土に還った。 「ね、帰りましょう。その……アナタ」 明確に貴方とは違うアクセントで永琳は○○を呼ぶと、その腕をとって寄り掛かりながら歩き出した。 ひどく歩きづらいが、永琳はお構いなしに十歩歩くごとに○○を見詰めて、二十歩歩くごとに愛を囁いてきた。 それは永遠亭につくまでずっと続いた。 「死なずにすんだ」という永琳の言葉を詳しく問う時間は、○○には全く与えられなかった。 完
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夜闇に降り積もる雪が浅瀬のように地を覆う中、樅は小高い丘の上で一人佇んでいた。彼女の見つめた方向は、遠く、深い森の向こうで小さく柔らかな光が灯っていた。そこを見つめるその横顔は、瞬きをするのみの微かな動きしかなかった。だが、その時の彼女は最も美しい女の顔をしていた。 いつからだろうか。樅が毎夜、里から抜け出すようになったのは。男がらみの夜遊びか、ついに彼女もそういうことを覚え始めたのかと、最初は嬉しくもあった。あややけれど、必ず一刻や二刻程度で戻ってくるのだ。彼女ゆえに生真面目過ぎる交際を行っているのは、友人の私としては面白くはない。だから、少しだけの悪戯心で尻を叩いてやろうとしただけだった。 記者精神を輪にかけた好奇心を持って私は夜に樅の後を追った。里の門をくぐり抜けると、足早に森の中を駆け抜け、かなり開けたところに出た。眺めのいいところだった。空が両手をいっぱいに広げて、月と星を抱え込んでいる。その足元には、森林が根をはり大地を覆っていた。そこは高台のように周りの地表から盛り上がり、突起した地形であった。そこで、樅は一人で立っていた。彼女は何もせずにただある方向を望んでいた。 いつからだろうか。私がここへ来るようになったのは。彼を知って、彼に惚れて、それから。 私は何をしたいのだろう。何を求めているのだろう。彼に触れたいのか、彼に愛されたいのか。 臆病な狼がいるだけ。ただ一つわかるのは。 それから暫く経ってからも、樅はあの丘へと通い続けた。そしてその頃には私も彼女がしていることと視ているものたちも知っていた。叶わぬ恋と諦めて捨ててしまわず、抑えきれずと奪おうともしない。なんとも、幻想郷の女らしくもない中途半端な恋。いつまでも、このままでいいのか。乙女よ。 私はいつまでここへと通うのか。切って捨ててしまおうとすれば、出来るのだろう。何故、それが出来ないのかも分からない。ただ、彼の顔を、背を、見たくて。 彼の子供が生まれたら、そこで諦めよう。多分そこが区切りなのだと思う。 肩に乗った雪が冷たい。そう気付いた時には、もう朝になっていた。受け身も取らずにそのまま倒れる。軽い衝撃と、優しい包容に包まれる。何故か、誰かに慰められたようで泣きそうになった。情けない声が漏れでる。しゃくりで息が詰まる。突然、何かが覆い被さってきた。抱き締められる。何かに気付いた時にはもう耐えられなかった。 「ばかあや、いつからみてたの」 「あやや、友人にそんなことをいうなんて失礼な狼ですね」 「わたし、むりみたい。あきらめられない、つらいよ」 「いいんですよ、今は。そんなこと考えなくて」 私は今日もこの丘へ来るのだろう。いつまでも。この恋がいつか、なくなるまで